第509話 余裕


「――高杉といったな。おぬし、稲妻を意のままにしておるな?」


 儂は確信を持って問うた。

 何も今この時だけではない。

 水壕へ稲妻が降ったのもそうじゃ。

 雷が帝国軍やつらに都合よく落ちすぎておる。


「御名答」


 高杉は片刃の僅かに反りのある剣の切っ先を明後日の方向へ向けた。

 たったそれだけで、指し示した先に雷が落ちた。


は僕本来の能力ちからではないのだけれど、使えるものはなんでも使っておこうかと思ってね」


 切っ先をこちらに向けてきた。

 今度はいよいよ儂の番か。

 先程の一発は威嚇、いやお披露目というわけじゃな。

 いずれにせよ、


「そういうのを油断というのじゃ!」


 儂は詠唱無しで屍者召喚をおこなった。高杉の全周及び下からの死者の群れ――を囮にしてやった。上空にも魔法陣を設置。魔法陣からまろび出た使者が滝のように降ってくる。上から落とすのは貴様だけの専売特許ではないと知れ。


「死ぬがよいわ!」


 高杉を圧死させるつもりで召喚した死者どもはしかし、高杉に激突する手前でのようなものに阻まれた。


「僕の場合、油断ではなくて余裕というのだよ」


 この小僧、稲妻だけが能ではないのか……?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る