第482話 帝国の思惑

 現在の戦況は控えめに評価しても帝国軍に不利だ。圧倒的に、という表現を加えてもいいほど旗色が悪い。

 今、帝国がこちらに打診してきそうな話といえば――


「妥当なところで和睦。ごめんなさいはしたくないでしょうからね。お互い兵を退きましょう、ってところじゃないですか?」

「自分から攻め入っておいて随分身勝手な話だな」

「仰る通りで」

「他には?」


 イグナイトが促してくるが、帝国の思惑としてはそんなもんだろう。

 他にと言われても特には、


「思いつかないんですよ。こちらの形勢が優位ですからね。向こうから提案できるのは和睦や停戦くらいしかない」

「ふむ。聞けばわかるか」

「そうですね」


 一応、天幕の周りは兵とノヴァが固めている。

 何かあっても対処できるだろう。

 エリザヴェートとバネッサは外した。暴走されたら困るからだ。


 一応の準備を整えた俺とイグナイトは天幕で帝国の使者と対面した。

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