第467話 赤の勇者の存在感

 赤い髪、紅玉色の瞳、そして紅蓮の刀身の魔剣。赤の勇者ノヴァの威風堂々たる姿に、王国兵の士気が高まっているは明らかだった。


「よく来てくれた」

「遅くなり申し訳ございません、ユーマ殿」

「ヴィクトールが軟禁を解くのが遅いのはノヴァのせいじゃないだろ」

「そう言っていただけると助かります」


 今度ヴィクトールに会ったら文句を言ってやる。


「それで、戦況はいかがですか?」

「悪くはない」

「微妙な表現ですね」


 流石は赤の勇者。戦闘に関する話への嗅覚は鋭い。

 俺がざっくりとここまでの流れを説明すると、ノヴァは眉根を寄せた。


「――なるほど。確かに悪くはないですね。良くもないですが」

「優位な状況なうちに有効打を入れておきたい」

「はい。優位と勝利は別ですからね」


 仰る通りだ。

「勝ちそうだ」というのと「勝った」との差は果てしなく大きい。


「来てくれたばかりで悪いがノヴァにはひと働きしてもらいたい」

「望むところです」


 ノヴァは勇者らしく不敵な笑みを見せてくれた。こういう時は本当に頼もしく見えるな。こういう時は。

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