第466話 勇者到着

 とはいうものの、効果的な一手なんてものがすぐに思いつくはずもない。


 使える兵力は限定的なのに敵の数は膨大。守勢に回るなら持ちこたえられるとは思うが、攻勢に出るには駒が足りない。例えば俺が打って出た場合、全ての判断をイグナイトに一任することになる。これまで話してみた感じ、無能ではないが咄嗟の判断力は少々怪しい。俺だって所詮は一般人なので戦争の手管なんてものに詳しいわけではないが、それでも指揮所を離れられないな、と感じていた。


「どうしたもんか」


(死体が水路のあたりに大量にできとるじゃろ。いつかのように黄泉還よみがえらせるかの?)


「いよいよどうにもならなくなったら頼むことになるだろうけど……」


 は威力絶大だが、どうにも心証が悪い。見た目もえげつないし。


「できることなら使わずに済ませたい」

 

(そんな悠長なことを言うとる余裕があるのかの)


「ねえな……」


「ヤツ」とそんな感じで相談して――傍目はためにはブツブツと虚空に向かって呟いて――いる時だった。

「ユーマ殿!」と、聞き覚えのある声が俺の名を呼んだ。

 声の主の姿を認め、俺は安堵した。


 ノヴァ・ステルファン。

 王国が誇る炎の魔剣使いその人だった。


「待ってたぞ、赤の勇者」

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