第419話 曇天に彼方を想う
俺は王宮を出て、防衛線の構築現場を訪れた。多くの兵士が土木工事に励んでいる。その陣頭指揮を執っているのはなんとイグナイトだった。
「王族が現場監督って、人材足りなさすぎではありませんかね、殿下?」
「黙れ。万が一にもここを抜かれるわけにはいかん。責任ある立場の者が陣を構築しなければならんのだ」
真面目な男だ。兄貴に少し分けてやってくれ。
それはさておき。
今、俺たちが居るのは、王都を北上した国境沿い。左右を山に挟まれたやや開けた平地が眼前に広がっている。守るにはいいが攻めるのが難しい場所のように見える。
「帝国がココを通る確証はあるんです?」
「奴らの侵攻経路は毎度同じだ。あの時も、先日も」
「そうなのですか」
「そうだ。山は人の手が殆ど入っておらず行軍には適していない。よって奴らはこの平野を抜けてくる」
「海を回って港から、とか、逆に東側の街道沿いに攻めて来たりとかはしないのですか?」
「船で大兵力を送り込むのは帝国所有の船では足りん。あの国は陸軍が中心だからな。――街道側から来るのであれば、町が幾つか蹂躙されることになる。手始めはムラノヴォルタだろうな」
意味ありげな視線をこちらに寄越すイグナイト。
「それは貴様が止めるだろう?」
「とんだ買い被りですな、殿下」
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