第409話 灰色の雲、雲間の光

 祠の主――この山を守護する大精霊であるウェントリアスは、尊大な態度で俺の課を下から覗き込むように見上げてきた。機嫌悪いな。


「辛気臭くてかなわん。出直して参れ」


 ひどい言われようである。

 ウェントリアスらしいといえばそれまでだが。


「いや、うん。辛気臭いのは申し訳ない。考え事をしながら歩いてたら知らん間にココに着いてたんだ。出直してくるよ」



回れ右をした俺の背中に、風が声をかけてきた。


「しばし待てぃ」

「ん?」

「余の所に自然と足が向いていた、とな?」


 ちょっと違うが、大意は合ってる、かな。うん。俺が微妙な角度で頷くと、大精霊様はさっきまでの不機嫌はどこへやら、口元をむにむにさせている。笑いを堪えているんだろうか。


「そういうことなら余が相手をしてやらんでもない」


 そういうことになった。

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