第401話 まだこの国を 僕らあまりにも知らなすぎ

 正解が出てこなさそうな考え事は、商談の後にすべきだ。

 俺は放置されて若干むくれているクラリッサに右の掌を開いて突き出した。


後装式ライフル銃コイツの、弾はあるか?」


 銃だけあっても撃ち出すものがなければただの棒きれだ。鈍器にはなるが、それならそこらの丸太でもいい。


「五発っきりだけどな」


 クラリッサは慎重な手つきで鞄からあるもの取り出した。それは小さく細長い筒状の物体だった。指先で摘んだソレが俺の掌に着地し、コロンと転がった。


 受け取ったのは、薬莢だった。

 紙製は――初めて見るな。というか薬莢のゲンブツを手に取るのも初めてだけど。俺は元の世界あちらではごく普通の一般人だったから本物の銃器に触れたことなどない。


「薬莢か。そりゃ、あるわな」


 前装式の火縄銃と異なる設計思想の産物。後装式なのだからこうであるべきなのはわかるが、進歩的な技術であることに疑問の余地はない。


「……にしても、このライフルが王都襲撃してきたこの前の帝国軍の装備してものより上等なのはどういうことだ?」


 さっぱりわからん。

 自問したつもりだったが、クラリッサが口をひん曲げて俺の内心と同じ言葉を口にしてくれた。


「アタシに聞かれてもわかんねえよ」

「だよなあ」


 頷く俺にクラリッサは白い歯を見せた。身を乗り出してくる。


「で? 買うのか? どうする?」

「そうだなあ」


 俺は腕を組み、少し考えるをした。

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