第400話 はなしをきいて

 クラリッサ曰く、帝国の町に買物に行った際に偶々銃を手に入れたのだそうだ。民間の商人が? 銃を? とは思ったが、当の本人が現物を出してくるのだから信じるしかない。

 しかもその銃が――


「――後装式」

「そいつを売ってくれた爺さんも同じこと言ってた」


 前装式の火縄銃ではない。

 後装式のライフル銃が出回っているのか。狙撃銃ライフルというほどの精度も射程も無いだろうが、火縄銃とは比べるべくもあるまい。


 後装式というと、元の世界あっちでいう現代の銃ではない。近代あたりの技術だろうか。西暦1800年代後半あたり、だったか?


 なんにしたって技術格差がありすぎる。中世然としたシュトルムガルド王国に対して、銃兵を兵科として運用できるほどの火器の量産に成功しているリーヨーン帝国。


 ――この差はなんだ?


 王国が遅れているのか、帝国が進んでいるのか。

 十中八九は後者。

 であれば原因は? 


 何故帝国の技術水準はこうも高い?

 まともな技術進化の仕方ではこうはなるまい。

 あの国には一体何がある……?


「……ン。……ッサン! オッサン!!」

「うわあ、びっくりした」

「死んだみてーに黙り込ってどうしたんだよ。商談中だぞ?」

「すまんすまん」


 余計なことを考えるのは後でいい。

 俺は今一番情報を持っているだろう商人の少女に集中した。

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