第393話 物流の違い、仕事の依頼

 空笑いをしながら俺は商人に釘を刺す。


「先に言っておくが、ウチに置いてある備品は諸事情につき増産できない。だから売ってやることはできないぞ」


 発注してた商社も椅子は家具製造会社に、コーヒーカップは窯元に、それぞれ手配をかけていたはずである。元の世界あっちの物流をイチから説明するのも面倒だし、基本的なモノの流れは異世界こっちでもそうは変わらないだろう。規格と速度が違うだけだ。あとは情報か。POSシステムとか無いしなこっちには。


「こんな宝の山を見せておいてご無体な」

「仕方ないだろ。これがないとホテル業こっちの商売が成り立たん」

「そりゃそうですが」


 いい大人が未練がましい顔をするなよ。仕方のない奴だな……。


「代わりに仕事をひとつ頼まれてくれないか。それで勘弁してくれ」

「そりゃまた、ありがたいことで」


 ブルーノは一転笑顔。揉み手などしている。あら、上手いこと釣られたか? 元々依頼はするつもりだったからいいけどな、などと内心で負け惜しみを呟くと「ヤツ」がくつくつとわらっていた。


「――細かい事はまた明日だな。今日のところはウチの部屋で休んでくれ」

「いいんですかい?」

「勿論」


 部屋は空いてるからな。

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