第390話 アイの自信と帝国の意図

「概況は理解しました」

「うん」


 理解が早くて助かる。


「ですが現状帝国軍がそれほどの脅威であるとは考えられません。三日おき程度の頻度で攻勢をかけてきておりますが、アイひとりで十分対処できております」


 思ってたより頻繁だなオイ。

 威力偵察、か? それとも地形の把握か。狙いがウチの宿ホテルなのは間違いないだろうが、行動の意図が読めない。ただの擾乱攻撃いやがらせという線もある。何にしても――


「――まだ帝国も本腰入れてないみたいだ。小勢相手ならアイが後れを取るわけはないよな」

「はい」

「問題は旅団規模とかで来られた場合だな」


 帝国の一旅団の規模は五千人だったか。ちょっと手に余る数だ。


「私と骸骨兵スケルトンウォリアーで対処します」

「アイがいる拠点は維持できるだろうけど他の戦線がもたないだろうなあ」


 元の世界あっち戦記物しょうせつで読んだことがあるが、戦線の弱いところに火力を集中させて食い破り後背を突く。よくある手だ。銃器を導入してる帝国軍がその程度の戦術を用意していないはずがないのだ。


「――話が逸れたな。で、クラリッサが銃器の売り込みに来てるって?」

「はい」

「現物は見たか?」

「見ました。ですが、私の一存で判断すべきではないと保留しております。他には流さないようにと


 うわ、怖っ。アイが味方で本当によかったと思う。

 そんな内心をおくびにも出さずに俺はアイを褒めた。


「上出来だ」

「ありがとうございます」


 撫でろと言わんばかりにアイの頭が左右に揺れるので撫でてやると、背中越しにも満足そうな気配が伝わってきた。


 さて、クラリッサが訪ねてくるのは確か明日だったか。どんな銃を持ってくるのやら。

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