第389話 敵の名はリーヨーン帝国

「ユーマ様、質問しても宜しいですか?」

「うん」

「お困りになられている理由をお教えいただけますか?」

「あー、はい。ええとだなあ――」


 銃というものは非常に厄介だ。どんな非力な存在でも長射程の殺戮兵器にしてしまう。対抗するにはより長射程の範囲攻撃が可能な兵科――例えば砲兵を用意するしかない。間違っても騎兵突撃などしてはいけない。王国軍は実際それで酷い目に遭っている。


「――そして問題なのはうちの宿ホテルも帝国から標的マトにされているってことだ」


 あのリーヨーン帝国とやらが銃器を量産しているだけならまだいい。


「俺が不在の間もちょこちょこ帝国の斥候が来てたろ?」

「はい、ユーマ様。当館に対する威力偵察がおおよそ三日に一度の頻度で行われております」


 つまりはそういうことだ。帝国はうちの宿ホテルを明確に敵視している。王国の施設と考えているはずだ。あの日――エリザヴェートが訪ねてきた日――、帝国の斥候がやってきた時から、俺のホテルは目を付けられている。


「俺たちも王国と帝国の戦争に巻き込まれると思って間違いない」


困った困った。

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