第360話 砂上の楼閣を守りたい気持ち

 王国の軍備では、


「帝国の銃兵に対抗するにあたって、騎兵じゃどうにもならんのはご存知でしょう?」


 思い出したくもないが、俺がいなければ王都は甚大な被害を受けていた。


「報告は受けている。だから魔剣か」


 苦い顔をするイグナイトに俺は頷いた。


「そうです。銃兵の射程外から魔剣の火力ですり潰す以外にありません。王国軍で銃の射程に勝っているのはノヴァの魔剣くらいでしょう。だがそれをするにもノヴァひとりじゃあ手が全然足りない。折角あと二振りもあるんです。使わない手はないですよ」


 まあ、三人でも足りないと思うので別案も必要だが、今はそこまで話さなくていい。


「だが」


 まだ「うん」と言ってくれないのか。

 俺は内心舌打ちをした。


(おそらくじゃがな)


 それに対して「ヤツ」が俺のうちから伝えてくる。


(イグナイトは勇者の称号を貴族以外に授けたくないのじゃろうなぁ。王家、貴族を頂点とした階級社会が崩れるのを怖れておるのよ)


 ……そんなもん、遅かれ早かれ崩れると思うんだが。


(そうじゃの。じゃが権力者というのは砂上の楼閣に拘泥するものよ)


 ふむ。

 そういうことなら、まあ、わかる。

 ならば――

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