第345話 大岡裁きとはいかないまでも

 ああ、もう、面倒くさい。

 俺はガリガリと頭を掻いた。


「俺が処断を下す。異論は認めない」


 返事も待たず、告げる。



「ノヴァ、お前しばらく謹慎してろ」

「ユーマ殿!?」


 異論は認めないと言ったぞ。

 それに、


「第一王位継承権者に楯突いたんだ。これくらいで済んでむしろ御の字だろうが」

「それはっ……そうですがっ」


 じゃあ黙ってろ。

 次は、


「ヴィクトール、お前はもう少し下の者への言葉遣いを勉強しろ。為政者として言葉が足らんのは致命的じゃないか? 礼と言葉は尽くせるだけ尽くせ。国を上手く回したいならな」

「返す言葉もない」

「しばらく大人しくして反省しろ」


 こんなもんか。

 後は、


「で、だ。ノヴァ、お前はレーヴァテイン没収な」

「えっ」

「安心しろ。謹慎してる間預かっておくだけだ。謹慎期間中の魔剣の管理は……ええと、そうだな。イグナイト殿下にお任せしましょうか」

「待て。何故私がそんなことを?」


 ごちゃごちゃ五月蠅い。


「殿下の兄上が粗忽者で妹君が謀反人なもので、他に適役がいないのですよ」

「むうっ」

「お頼みできますよね?」

「是非もないのだろうが」

「理解がお早くて大変助かります。ではよろしく」


 俺はノヴァから魔剣を受け取り――というか取り上げ、イグナイトへと預け渡した。

 そして最後に、


「じゃあ、ノヴァはエリザの隣の部屋で謹慎してろ。いいな」


「「「は?」」」


「は?」じゃないんだよなあ。

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