第346話 王族と英雄

 一番最初にアホ面から復帰したのはヴィクトールだった。

 困惑も露わに、


「我が英雄よ、それは流石に好ましくない」


 などとのたまった。


「何か問題でもあるのか?」

「隣室はいささかどうかと」

「馬鹿を二人軟禁するんだ。ひとまとめにしといた方が見張りの手間も省けるだろ」

「一理あるがね……」

「なら決まりだ。終わったことをいつまでも引きずってる暇はないんだから」

「というと」

「帝国だよ。対帝国の備えをしないと。次はやられるぞ」


 内輪揉めなどしている状況ではないのだ。しこたま痛めつけておいたので明日にでもなんてことはないだろうが、帝国は必ずまたやってくる。俺がこの王国で平和に宿屋を続けるためにもヴィクトールには頑張ってもらわなければならない。


「わかったよ、我らが英雄よ」


 うむ。わかればよろしい。

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