第314話 姫と騎士と運命の出会い
心地よい緊張感が王宮の中庭の一隅にある訓練場には満ちていました。
衣擦れ。
踏み込み。
荒い呼吸。
裂帛の気合い。
木剣の撃ち合い。
空気を震わせるそれらの音が、耳に気持ち良いのです。
そこへ
「全員
稽古に励んでいた騎士たちが手を止め、一糸乱れぬ動きで最敬礼を取りました。厳密にはひとり、遅れておりましたが。
敬礼は「私に」というよりは「私の立場に」ですよね、というのは子供でも分かります。
「どうぞ私に構わず続けてください」
「恐れ入ります、殿下」
「――それから今日もお願いしますね、騎士長」
「承りました」
私のたっての希望で、騎士長から剣の稽古をつけてもらっているのです。
立場を弁える必要はあれど、存分に体を動かせるこの束の間の運動が、私は大好きなのでした。
「ところであの子は?」
訓練場の端の方で剣を振っている少女がいます。敬礼が遅れていた子。
「不肖の娘でございます」
「お幾つなのですか?」
「殿下と同い年にございます」
「そうですか。お名前は何と」
「ノヴァと申します。――ノヴァ! こちらへ来て殿下にご挨拶しろ!」
それが私とノヴァの邂逅の瞬間だったのでした。
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