第315話 喜悦満面、不満一杯

「はじめまして、小さな騎士様。私はエリザヴェート・フロランス・シュトルムガルド、この国の王女です」

「エリザヴェート殿下、私は見習いの身ですので騎士ではありません。ノヴァ・ステルファンと申します」


 王族相手に愛想のない形ばかりの挨拶。

 騎士長が思わず咳払いするほどの素っ気なさでした。

 新鮮な反応で私は少し面白かったですけれど。


「……これが我が家の末の娘でございます、エリザヴェート殿下」

「ありがとう、騎士長。ノヴァ、どうか以後お見知りおきを」

「はい。よろしくお願いします……」


 私は少し意地悪な顔になって、騎士長に提案しました。


「今日のお稽古はノヴァと一緒に、というのはどうかしら。剣を交えて」


 騎士長はほんの一瞬険しい表情を見せ、


「――殿下の仰せでしたら。ノヴァ、お相手をしろ」


 と頷いてくださいました。優しいですね。

 一方ノヴァは露骨に不満げ。


「…………はい」


 やっぱり面白い子です。

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