第十五章

第291話 名探偵ネクロマンサー

(さてユーマよ、ここ数日かけて儂は足を棒にして王都を調べ回ったわけじゃが)


「いや待て。足を棒にしたのは俺だ。お前は『あーせい、こーせい』指図してただけだろうが」


(名探偵とは椅子から動かぬ者なのじゃろ、ワトソン君?)


「誰がワトソン君だ! 誰が!」


(ふふん、おかげで証拠は揃った。あとは連中が来るのを待つばかりよ)


 と、自信満々な《ヤツ》ではあるが、


「本当にでやるのか?」


 というのは今、謁見の間のことである。


(無論)


《ヤツ》が頷くと同時――、ガクン、と俺の視界がブレて体の主導権を《ヤツ》に奪われた。どんどん《ヤツ》の支配率が上がってきてないか? 大丈夫か俺。というか勝手に主導権を持って行くな!


が推理を披露するに相応しい舞台はここしかあるまいよ。そうは思わんかの、容疑者諸君?」


 呼びかけに応じて、《ヤツ》の言うところの容疑者たちがぞろぞろと姿を現した。

 カーテンの裏、柱の影、玉座の向こう。

 謁見の間、出入り口多すぎだろ。


「深夜の呼び出しに応じて頂けたこと、感謝する」


 俺――否、死霊術師ミラベル・アンクヤードは、にたり、と唇を歪ませ容疑者たちを睥睨したのだった。

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