第292話 容疑者ロワイヤル

「こんな時間に我らを集めてどういうつもりだ?」


 カーテンの裏から姿を現し、一番最初に喚き散らかしたのは第二王位継承権者――イグナイトだった。


「こんな時間に大声を出すのもどうかと思うがの、イグナイト殿下?」


 にたり、とミラベルが嗤う。

 やめろ煽るな。


「宿屋風情がこの私をコケにするか!」


 ほらこうなる。


「イグナイトお兄様、おやめになってください!」


 間に割って入ってきたのは第三王位継承権者にして俺の雇い主でもある、エリザヴェートだった。彼女は正面の扉から入ってきていた。


「黙れエリザヴェート」

「お兄様!」


「ふたりとも兄妹喧嘩はやめるんだ。救国の英雄の前で醜態を晒すものではないよ」


 玉座の脇に佇むのはクソッタレの第一王位継承権者、ヴィクトール。

 誰が英雄だ。

 お前こそその口を閉じろ。


「くっくっく、ようこそヴィクトール殿」

「深夜のお招きありがとう、大英雄。一体何事ですか?」


 おいミラベル、やるんだろ?


「今更後には引けまいよ」


 と、「ヤツ」は小声で呟いた。

 尊大に、盛大に、芝居がかった仕草で両手を広げて見せた。


「これから謎解きをはじめようと思う」


「「「謎解き?」」」


「エリザヴェートを襲い、現王をもしいそうとした者をこの場で突き止めてみせよう。そう申しておるのじゃ」


「ほう」

「なっ……!?」

「ユーマ様?」


 三者三様の反応。

 そして、ミラベルは薄ら笑いを浮かべ双眸そうぼうを輝かせた。


「さて各々方おのおのがた、お覚悟は宜しいか?」

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