第289話 獣は家族を護る


 ボクはとても暇だった。

 リュカはなかなか戻ってこないし、周りの馬たちみんなはボクを怖がっている。

 別に獲って食べたりはしない。

 そんなことしたらリュカに迷惑がかかってしまう。


 だからボクはじっと待つ。

 リュカの戻りをずっと待っている。


 つもりだった。


 リュカの気配がした。

 もうひとり、一緒に来た女の子の気配も。


 それだけじゃなかった。

 複数の良くない気配にボクは気付いた。


 次の瞬間、ボクは馬屋から抜け出していた。

 建物の壁を蹴り、屋根の上に着地。滑るように駆けだした。


 ボクの親がリュカの親を護ったように、ボクはリュカを護らなければならない。

 ボクはボクの家族を護る。

 とはもう違う。

 無力ではない。

 リュカも。

 ボクも。


 ボクは疾走はしる。

 リュカの、ボクの主の元に向かって――

 

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