第279話 若き商人の矜持

 ジイさんの問いに対するアタシの答えはこうだ。


「安いのが気に入らねえ理由?」


 そんなものは決まってる。


「ワケわからんくてキモチワルイから。それが理由だ、ジイさん」


 ジイさんが一瞬、驚いた顔をした。

 ような気がしたが、そんなこたぁ心底どうだっていい。

 アタシは言葉を続けた。


「銃はホンモノ。壊れてもいない。なのに格安。何故だ? 全く気持ち悪いったらねえ。アタシ自身が納得できねえモンを仕入れて、人様に売りつけられるもんかよ!!」


 アタシはまだ全然ガキで、行商人としても駆け出しで、知らねえことばっかりの物知らずだけど、それでも、それでも商人としての矜持プライドくらいは持ってんだ。舐めんな。


「だからとっとと吐きやがれ。見てりゃわかんだろ? 手ぇ、震えてんだよ。いつ暴発しても知らねえぞ」


 ジイさんはまた笑った。

 さっきよりも柔らかく、笑っていた。

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