第280話 商人たちは笑う


「笑うとこじゃねえだろ」


 と、銃を構えたまま言うアタシに、ジイさんは笑みを浮かべたまま、


「撃てるというのかね?」

「撃っちまうかもなあ?」


 だからアタシも笑った。

 顔はこわばり、頬は引きつっていたけれど、とにかく笑った。


「撃つ意志はあるんだろうが、撃ち方を知っているのかね?」

「撃っちまうかもって言ってんだから知ってるに決まってる」


 知らんけど。

 ハッタリだ。

 そもそも銃の詳細構造や弾がでる理屈も把握できてはいない。

 高威力の遠距離射撃ができる鉄の棒、程度の認識でしかない。


「そうかね」


 アタシのハッタリをどう思ったのか、ほんの僅かにジイさんの視線がアタシから逸れ、すぐにアタシに目を合わせなおした。


 ……今、このジイさんは何を見た?

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