第255話 商人は驚き、そして不思議に思う

 街道を進み続けると、彼方に町の姿が見えてきた。


 水源が枯れているのか、干上がった短い幅の水路に渡された橋を越え、近づいていく。奇妙なことにその水路は街道と交差するように何本も引かれていた。アタシの見た所、農地でも無さそうなのに。


「ん?」

「どうかしたデス?」

「いや、リュカ。手綱離して何やってる! 危ないだろ!」


 そう、リュカはデュワンゴに繋がれた手綱を持たずに、小さな紙きれの束になにやら書き込むのに夢中になっていた。


「シュラなら大丈夫デス! 絶対デス!」

「ばうっ!」

「ほら、シュラも大丈夫って言ってるデスヨ!」

「……わかった。そっちはもういい。それで、何やってるんだ?」


 軽い眩暈めまいを覚えつつ、アタシはリュカの手元の紙束を指差した。

 リュカはでへへ、とだらしなく笑い、


「これはアイに頼まれたデス。町と町の近くの地図を書いてるデス!」

「地図?」


 平野に街道、水路、その先に町――というか集落があるだけ。

 そんなものをわざわざリュカに書かせて、宿屋に一体何の得があるっていうんだろうか?

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