第242話 内憂外患にあっても急いては事を仕損じる、との諫言
謁見の間でのあれやこれやの後、俺は宿屋に戻って来た。
ベッドに横たわり、明かりも付けていない部屋で天井を睨みつけ、唸る。
思い出すのはヴィクトールの妄言だ。
……誰が英雄だ。
などと、文句を言ってもはじまらない。巻き込まれたのには自分の判断ミスも含まれているのだし。
「帝国軍をどうにかしなくちゃならんが、その前に内政問題片付けないとな……」
そう。
帝国とやり合ってる最中に背後や横腹を身内に突かれては、勝てるものも勝てはしない。ただえさえ次に帝国が攻めてくる時はおそらく本腰を入れてくる。王国軍の兵力で勝てるかどうかすら怪しいものだ。
「なあ、ミラベル」
(なんじゃ、ユーマ)
「お前はどう思う?」
(どうとは?)
「この王位継承権争いについて、だ」
呪いでも毒でもなく体を壊し、玉座からベッドへ居場所を移している現王。外面はいいが腹黒で性格最悪の第一王子。性格は悪いが愛国心を持っている、けれど貴族第一主義の第二王子。そして俺に依頼を寄越してきた、民草のことを想うお転婆気質の第三王女。
(やれやれじゃの)
俺の心の裡で、「ヤツ」が苦笑する。
(俗世の輩はいつまで経っても成長せんな。目先のことに気を取られてばかりで、長い時間での視座に欠ける。ユーマ、おぬしもじゃぞ?)
「む」
俺もか。
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