第532話 最後


「嫌だ。帝国の視察受け入れなんてトラブルの種にしかならん。面倒事に関わるのは御免だ」


 俺はばっさりと切り捨てた。

 メリットが無さすぎる。

 ついでに一銭の得にもならないことに付き合ってはいられない。


「と、言いたいところだが、仕方ないから受け入れてやるよ」

「流石我らが英雄だ。話が早くて助かる」


 調子のいい奴だ。


「ただし、視察の際には俺の言うことに従ってもらう。従えないならすぐさま帰らせるからそのつもりで」


 帝国側に向けても釘を刺すと、高杉は俺を一瞥して軽く頷いた。

 どうせああだこうだ理由をつけて押し付けられるのだ。ならさっさと受け入れてこっちから条件を並べてやった方が幾分マシというものだ。


「視察で発生した費用はどっちが負担するのか知らんがとりあえずヴィクトールに請求を回すからな」

「構わないよ」

「それと――、今回が最後だ」


 宣言する。


「国家間のいざこざには俺は今後一切関与しないからな」


 俺の意思表明に、ヴィクトールと高杉がはははと笑った。

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