第533話 握手


「我が英雄の意向に添えるよう善処するよ」

「僕の方も真田悠馬サナダユーマ君にはなるべく迷惑をかけないつもりだ」


 一ミリたりとも思ってないことをベラベラと口にする。

 ヴィクトールも高杉もまともに付き合うべき相手ではない。俺なんかとは違う人種の変人なのだ。


 この後は比較的平穏に話は進んだ。

 戦費についてはお互いに請求しないということで妥結。同盟関係には遠く及ばないまでも隣国としてまあまあ許容できる程度の条約が結ばれそうな運びだった。細かい内容はおいおい詰めていくことになるだろう。


 最後にヴィクトールと高杉が握手をして講和会議は終わった。


「やれやれ」


 話のほとんどは俺がどうこう言えるものではなかった。視察の件のためだけに同席させられたなコレ。


真田サナダ君」

「げ」


 高杉。まだなんかあんのか?

 と思ったら右手を差し出してきた。


握手シェイクハンドしよう」

「……どうも」

「ははは、警戒されているね」


 そりゃまあ。


「このあと、ちょっといいかい?」


 やっぱりまだなんかあんのかよ……。

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