第238話 芸は身を助けない、こともある
よし、この場の最高権力者の
「つまり無罪放免ってことですね、ヴィクトール殿下。では、私はこれにて失礼」
俺がくるりと背を向けた。
その背に、ヴィクトールがすかさず声をかけてくる。
「そうはいきませんよ、ユーマ・サナダ。今回の奇襲の失敗を踏まえて、帝国も次は本腰を入れて戦力を差し向けてくるはずです」
それはそうだ。
流石にヴィクトールはよくわかってる。
俺が帝国側の上層部にいても、きっとそうするだろう。
「
「でしょうね。けどそれは俺には――」
関係ない。
「――関係ないとは言いませんよね? ユーマ・サナダ。君は今回、あの帝国軍の奇襲を単身退けた英雄なのですから」
ん?
おい待て。
ちょっと待て。
今なんて言った!?
「……ヴィクトール殿下。聞き違いだろうか。今、私のことをなんと呼びました?」
俺のことを、アンタは、何と呼んだ?
「英雄、と」
にっこりとヴィクトールは笑う。
けれど、その目の奥は全く笑っていなかった。
「英雄……?」
英雄だと?
ふざけるな。
「誰が英雄だ」
思わず声に出すほど、俺は怒り心頭に発していた。
声を震わせる俺に対して、ヴィクトールは腹立つのを通り越して感心するほど冷静だった。
「ユーマ・サナダが、ですよ。塔の宿の
やめろ! 勝手に俺を定義するんじゃあない!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます