第十三章

第215話 長い一日の終わりに

 情報収集をしていたらしこたま遅くなってしまった。

 王宮を後にした時には、既に日は暮れていた。

 すっかり夜の帳は落ちており、街明かりはあるものの道はそれなりに暗かった。


 尾行でも付くかと思ったが、自意識過剰だったようだ。

 俺のことは重要視されていないか。或いは舐められているか。その両方か。


 尾行が無いといっても素人判断なのでアテにはならない。

 慎重を期するべきと判断する。


 俺は周囲を気にしつつ、のんびりと歩いて宿に戻ることにした。



 派手な宿の扉を開けると、客引きの男が出迎えてくれた。嬉しくない。


「おかえりなさいませ!」

「ああ、遅くなった」

「夜分遅くまでお疲れ様です!」

「何か連絡は」


 この宿のことは誰にも告げていないので、連絡があった方が遥かに問題だ。

 さて、どうだろうかと思ったが、


「特には承っておりません」


 問題なし。よしよし。

 俺は銅貨を渡し、


「ありがとう。引き続き誰も通さないでくれ」

「承りました!」


 しかしあの男、客引きをしなくていいのだろうか。


 俺は部屋に戻ると、骸骨兵を一体召喚。ベッドに寝かしてシーツを頭まで被せた。

 雑な偽装だが何もしないよりはいいだろう。

 念には念を入れておくべきだ。


 俺はひとり「よし」と頷くと、部屋を後にした。

 向かいの宿屋へこっそり移動するのだ。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る