第153話 毒か呪いかそれ以外か

 継承権争いは現王が病に倒れたのが発端、か。

 次期王様候補にとって、それはあまりにも都合が良すぎた。

 仕組まれた病なのではないかと疑ってしまうほどに。


「……王の症状はどのようなものですか?」

「酷く衰弱しております。倦怠感があって食事に起き上がるのも困難なほど」

「食事はきちんと摂れていますか?」

「あまり」


 エリザヴェートは沈痛な面持ちで首を振った。

 倦怠感を伴く酷い衰弱。

 食事も取れないほど。


「時折、喀血かっけつもあるのです」


 芳しくない状態なのはわかる。

 俺は内心に巣食う「ヤツ」問い掛ける。


 ……おいミラベル、この症状をどう見る?


(久方ぶりに名を呼んでくれたと思えば、またぞろこんな用件とはな)


 いいから答えろ。話し相手は今度してやるから。


(言うたな? 今、言質取ったんじゃからな? ――王を殺すには呪いか毒かが定番ではあるがの、実際に見てみんことにはなんともかんとも。ただ、作為的なものではありそうじゃなあ)


 呪いか毒か。

 人の手による可能性大なり、てことだな。


「王が臥せられたのはいつからです?」

「ノヴァがこちらに監察官に派遣された直後、でしょうか」


 赤の騎士の地位ポジションがどの程度か知らんが、実力者の不在時とはますますキナ臭い。


「それからです。わたくしのふたりの兄上の争いが表面化したのは」

「表面化ということは裏ではずっと次期後継者争いをしていたというわけですか?」

「はい。私を担ごうという者もさえおりました」


 上のふたりが潰しあってくれればエリザヴェートが王位に就く可能性もある。穴馬を推す奴がいるのも道理ではある。


「だからでしょうか。私が命を狙われたのは――」


 おいおい。姫の命まで狙うのか。王に毒だか呪いだかを盛ってるんだからおかしくはないか。いや、何もかもがおかしい。全部がどうしようもないほど狂っている。

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