第143話 魔法使いの休日

 そんなわけで休日です。はじめの頃は休みなしでしたけど、最近は働いている人もすっかり増えて休みも定期的にいただけるようになりました。私は部屋で普段着に着替えて、お客様の少なくなった頃合いを見計らって朝食会場に移動しました。


「いただきまーす」


 窓際のカウンター席で朝食を食べていると、外の石窯の傍にリュカちゃんの姿が見えます。


「なにやってるんだろ。って、魔剣!?」


 リュカちゃんがずるずる引きずっているのはノヴァさんの魔剣レーヴァテインに違いありません。

 ちょっとちょっと。何やってるのあの子!

 私は大急ぎで朝食をかきこみ、外に出ました。


「リュカちゃん何やってるの!?」

「ナターシャ! おはようデスヨ!」

「うん、おはよう。リュカちゃんは何をやってるの?」

「魔剣が燃えてたデスヨ!」


 燃えてた? 魔剣が? 勝手に?


「ノヴァさんはどこにいるのかな?」

「ノヴァはきっと“風”様のところデス!」

「あー、パンを届けるのって今日でしたっけ?」


 それなら魔剣を持たずに出かけているのも理解はできます。

 理解わからないのは魔剣が勝手に燃えていた(?)ということ。


「重いデス」

「どうしましょうねこの魔剣。ノヴァさんが戻ってくるまでちゃんと管理しておいてあげないと」


 あ、いつの間にかシュラが魔剣をつついたり舐めたり齧ったりしてますね。大丈夫なのかな。このまま見放すわけにもいかず私は、リュカちゃんとシュラと一緒にしばらく魔剣と――否、魔剣で戯れることにしたのでした。

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