第118話 言葉が悪口に聞こえても事実であれば受け入れるしかない

 悪態をついている張本人はアイと背丈の変わらない少女だった。くすんだブラウンの髪は短く切られ少年のようにも見えた。髪と同じ色の瞳には挑発的な光がある。身綺麗とは言い難いが、それなりに商人らしい恰好をしてはいる。


 俺が果物売りのオバサンを見ると、彼女は大きく頷いている。

 ってことは、


「キミがクラリッサさん?」

「だったらどうしたよ。なんか用かオッサン」


 オッサン……。

 年の差を考えればオッサン呼ばわりも認めるしかないか。

 だが、納得しない者がいた。

 アイだ。


「口を慎みなさい無礼者」


 アイが俺とクラリッサの間に割って入る。


「ンダコラやんのかテメーブッコロスゾ」

「何を仰っているのかわかりませんが死んでください」


 傍目には姉妹喧嘩のように見えなくもないが、実体は一触即発。

 暴発の危険しかない。

 口にしている罵詈雑言は殺意に満ち満ちていた。


「アイ、落ち着け。そっちのクラリーも」

「クラリーって呼ぶな! ぶっ殺すぞ!」


 キーキーやかましい娘である。

 本当にちゃんとした商人なんだろうか。


「メイナード氏の紹介で君に会いにきた。ユーマという者だ」

「ちっ、あのオヤジの紹介かよ。なら話くらい聞いてやらあ」

「ユーマ様、他を当たりましょう。コレは好ましくありません」

「ンダコラテメエ!」


 やめなさいふたりとも。

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