第112話 今日始めなかったことは明日終わったりしない
「どうだろうか」
ノヴァ謹製のパン第一号を俺たちは試食した。
「んー」
「うにゅー」
「……うん」
「頂戴いたします」
「素直な感想を聞かせてくれないか」
「普通、ですね」
「固いデス」
「ちょっと中が詰まり過ぎじゃないか」
「総じて不評です、ノヴァさん」
「そうか……。ユーマ殿のホテルで出しているパンには全く及ばないとは思っていたが、まだまだ全然だな」
「ノヴァ、クロワッサンって作れるか?」
「クロワサンとはあの何層にもなったふわふわでサクサクのやつか。作り方が分かれば、おそらくは」
「たしかバターだかなんだかを練り込んだ生地を折って伸ばす工程を繰り返したものを、切って丸めて焼くんだった、と思う」
自信はない。
「ほう、なるほどな。やってみよう」
「それと甘いパンって作れるか?」
「クリームは材料が高くつくし日持ちが悪いぞ」
「うーん。ジャムでも作るか。砂糖を安く仕入れられないかな」
「嗜好品だぞ」
「わかってるよ」
手持ちの砂糖で当座は誤魔化して、サトウキビでも植えて育てるか。それとも養蜂をしてハチミツでも収穫するか。チョコは――無理だろうな。あれは赤道付近じゃないと生育しないはずだ。それにカカオからチョコレートを精製する手順を俺は知らない。
人気の甘いパンの製造には、まだまだ前途多難だ。
それでもやった分だけは進んでる。メゲずにいこう。
「では二度目の試作に取り掛かるので、出来上がったら皆味見を頼むぞ」
前向きな勇者殿も居ることだしな。
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