第七章

第111話 急がずに、だが休まずに

 数日後、荷馬車で大量のパンの材料がホテルに届いた。石窯が完成したあとすぐにノヴァが王都の業者に依頼したそうだ。


「では、はじめるぞ!」


 どこかふっきれた表情のノヴァはやる気十分だった。

 やる気があるのは大変ありがたいことではある。

 パンについては材料代を払うくらいしか俺にはできない。


「ノヴァ、この材料代はどこに払えばいいんだ? 幾らだ?」

「それについては私からアイに請求書を渡してある。次の荷駄が届くまでに用立ててくれれば問題ない」

「アイがオーケーしてるならいいんだろう」


 金のこともアイがやってくれているらしく、俺は本当に何もやってないな……。

 ちなみに、いつの間にやら石窯の屋根には壁がついて、作業台も水瓶も様々な料理器具も準備が整っていた。荷馬車が来るまでの間にノヴァが骸骨兵と一緒にやっていたのだ。


「ふふっ」

「楽しそうだな」

「む? そうか?」

「笑ってたぞ」

「む……」


 いや、口元隠さなくても。

 というか今更隠しても遅いぞ。顔も赤くなってるしな。

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