第113話 共通する憎悪ほど人を結束させるものはない
俺はアイを連れて山を下り、ムラノヴォルタのメイナード町長宅を訪ねていた。
「――砂糖を扱う商人をご紹介すればよろしいのですね?」
「お願いできますか」
「はい、信用できる商人を数名紹介いたします」
メイナード町長のその言い方だと、
「信用できない商人もいる?」
ということになるわけだが。
メイナード町長は苦笑。
「流石ですな。仰る通り、怪しげな輩もおりますのでお取引の折には細心のご注意を。どうぞ、こちらをお持ちください。可能な限り便宜を図るよう記しております」
封蝋をした紹介状と商人の名前との書かれたメモ書きを渡してくれる。
「ありがとうございます」
「ユーマ殿、ホテルの方はご盛況のようですな」
「……毎日何かしら問題が起きていますけどね」
「おかげさまで町に留まる商人や旅人の数も増えてきております」
「それはよかった」
目論見通り。
今後もメイナード町長とはいい関係でいられそうだ。
WIN-WINというのは素晴らしい。
「今後とも、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
握手を交わし、俺とアイは町長宅を辞した。
「それでは、さっそく紹介いただいた商人に会いにいってきます」
「幸運を」
一旦大通りに出た俺とアイはすぐに、一本裏手の通りに入った。
怪しげな露天や店が並ぶ。人の賑わいもまあまあ。
道を歩きながら、俺は横のアイに問う。
「気付いてるよな」
「勿論です、ユーマ様。はじめて来ましたが町というのは物騒なところですね」
「……町が物騒というよりは物騒なやつが多めなんじゃないか?」
人通りが途切れる。
「出てこいよ」
と、声を掛けてやると、出てくる出てくる。ぞろぞろ出てくる。
思ったより多いなオイ。
その中には見知った顔もあった。
偏屈な白髪の老人――以前泊まった宿屋の亭主だ。
……逆恨みか。なんてこったい。
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