【幕間】
死霊術師、赤の勇者との夜更け
儂は両手にカップを持って玄関を出た。
壁沿いにぐるりと裏に回ると、小さな焚き火の明かりが石窯の前に見えた。
火にあたる自称勇者の小さな背中も。その背中は忍び寄る冷気を避けるようにマントを掻き寄せるようにして膝を抱えた。
儂が声をかけるより先に、その背中はこちらを振り返った。
「邪魔するぞい。ほれ、コーヒー」
「貴様か、その飲み物は苦手なんだが」
儂が差し出したカップを
「よっこらせ」
やや離れたところに腰を下ろしカップに口をつける。甘くて苦い味が舌を
「何用だろうか」
「ユーマがな、余計なお節介をしたいそうでな……」
「お節介だと?」
儂は口を歪め、短く
「――人使いの荒いやつよ。なあ、自称勇者殿」
ユーマの全身に莫大な魔力を流し込む。勇者殿が警戒感を示すが無視。
儂の魔力が凝集し束となって天地を貫いた。
「
やがて魔力は形を変え、細い糸となり、儂と勇者殿を繋いだ。
そして、儂の口が儂でもユーマでもない声で言葉を紡いだ。
『久しぶりだな、ノヴァ』
「な……兄上……ですか?」
『壮健そうで何よりだ――』
「うっ……」
『泣くやつがあるか』
交霊の儀式は
つまらぬのは儂にとってじゃが。
儂も会話を盗み聞きするほど悪趣味ではない。
ゆえに儂は目を閉じ、耳を塞いだ。
夜明けにはまだまだ時間がある。
勇者殿が全て吐き出すには少ないかも知れぬがな――
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