第107話 正しい石窯のつくり方

 ホテルの一階、朝食会場の窓から見える位置。

 やや傾斜のついた土地を削って整地していく。

 陣頭指揮を執っているのはノヴァである。


「ここに基礎を作るぞ!」


 骸骨兵スケルトンウォリアーがカタカタと応じ、作業を進めていく。コンダラで削って水平になった地面を踏み固め、ウェントリアスに切り出してもらった石を敷き詰めていく。長いこと道路工事をやったいたこともあって骸骨兵の手際が異常に良い。

 俺の出る幕など一ミリもない。ただ見ているだけだ。なんか申し訳ない。


 基礎ができたその上に、木枠を組み立てていく。

 ドーム状に作った枠に沿って石を積んでいく。

 積んでいくのはノヴァだ。

 思わず見とれてしまうほど――


「――手慣れたもんだな」

「そうか?」

「どこでそんなワザを習得したんだ?」


 俺が素直な疑問を口にしたところ、ノヴァは逆に口篭もってしまった。


「いや、それは」

「申し訳ない。言いたくなければ言わなくていいよ」

「すまん」


 そうして完成したのが見事な石窯。


「これで完成か?」

「まだまだ。これからだ。慌てるな、ユーマ殿」


 骸骨兵が、粘土と草を混ぜたものを石窯の外側にペタペタと貼り付けていく。

 いよいよえらいことになったな。


「これで完成したのか?」

「中の木枠を焼き払ったらようやくひと段落だ。ただ、このままだと雨で駄目になるから屋根を作ってやらねばならん」

「焼いた後だったら濡れても大丈夫なんじゃないのか?」

「石窯の外側まで火は通らないんだ。だから雨で濡れると粘土が溶けてしまうのだ」

「成程なあ」


 突貫工事で屋根が骸骨兵たちの手によってしつらええられた。



 こうして内側がドーム状になっているでかい石窯ができあがった。

 薪を焼いただけでも放射熱で十分な熱量が得られるはずだ。

 なのだが。


「ノヴァ、この穴なんだ?」


 スリットのような隙間が空いている。薪の投入口にしては小さく狭い気がする。


「ああ、それか。それは気にするな。うん」

「これでいいのか?」

「いいのだ、ユーマ殿」


 そこはかとなく怪しいのだが、いいというならいいのだろう。きっと。

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