【幕間】

“風”の守護精霊は傀儡と語らう

 招かれざる客が余の前に現れた翌日、久方ぶりにほこらからおもてに出た。燦々さんさんと降り注ぐ陽光のした、ユーマの言うところのとやらをしておるのは無数の骸骨共であった。


「なんとまあ」


 ざっと見た所五十かそこらは居った。

 それらは草を刈り、岩をどけ、土を踏み固め、道を成しておった。


「人手をかけるのかと思えば、骨とは余も思い至らなんだわ」


 ユーマめ、“冥府の窓”を従えておるのか?

 昨日の気配からは然様な感触はなかった。

 はて、どういうことか。

 いずれ知れよう。ならば思い悩むだけときの空費か。


「失礼いたします、守護精霊様」

「――傀儡くぐつか。よう来た」


 余の前に現れたのは異形の傀儡であった。

 日参の約束、まずは傀儡コレからか。


「歓迎しよう、久方ぶりの参拝者よ」

「おそれいります」

なれいが、汝の創造主はいつ来るかの?」

「恐れながら申し上げます。アイの創造主はユーマ様の中の『御方おんかた』にございますれば、守護精霊様がお待ちになられておられるのはユーマ様ご自身ではないかと」


 確かに“冥府の窓”とは顔を合わせとうない。

 にしても「アレ」とユーマは共生関係かや。


「よう心得ておるな傀儡よ。ではユーマに手隙の折に顔を見せよと伝えておけい」

「承りました、守護精霊様」


 余に対して丁寧に深く一礼する傀儡。つくづく躾の行き届いたものよ。


「ときに、汝にとってユーマとは何者か?」

「ユーマ様はアイの御主人様にございます」

創造主クリエイター主人マスターは別か」

「はい」

「そういった風潮が当世のならいかの?」

「はい。いいえ、守護精霊様。ユーマ様が特殊なのだとアイは考えます」

何故なにゆえ然様に考える?」

「ユーマ様はですので、当世風というよりもユーマ様らしいと申し上げるのが適切と判断いたします」

「ユーマは異界の者であったか……」


 “冥府の窓”がまたぞろ何かやらかしたかの。


「それにしても当世風ではなく、ユーマ風か。興味は尽きぬなぁ」

「それはようございました」


 山肌を撫でる風も心地よく余の心を弾ませよる。

 またしばしの間、浮世を楽しませてもらうとしようかの。

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