第六章

第93話 獣人少女の帰還

 つづら折りの道路工事もまずまず順調で、祠まわりも埋まってた部分を掘り返してイイ感じに整ってきた。祠に参るために坂道を通る者も今後は出てくるだろう。


 道路工事の方は地面を踏み固め、砂利を敷いて踏み固めるところまでは完了した。あとは石畳を敷いていけば完成だ。サイコロ状の石や同じ形に切り出した石を順に敷き詰めていく。気の遠くなるような作業だが、幸い俺には多くの手助けがある。


「のうユーマよ、ここまで手の込んだ工程が必要なのかや?」


 そのひとり(?)である“風”のウェントリアスは俺の肩の上に腰掛けて、道路工事の様子を眺めていた。肩に乗られている感触はあるが重さは感じない。精霊だからだろう。


「手抜き工事はあとで手痛い目に遭うからな」


 どんな業界でも手を抜くとロクなことにならないのは元の世界あっちの歴史が証明している。異世界こっちでどうかは知らんが、できるだけのことはやっておくべきだ。


「何事も最初が肝心ということか」

「そんなところだな……ん?」


 骸骨兵たちが敷石を並べている向こうから、獣に乗って爆走してくる姿を俺の視界は捉えた。その後ろを三頭の見たことのないイキモノが追走している。


 先頭を駆けるのはリュカを乗せたシュラだ。

 俺の目前で急制動をかけて、リュカは前方に放り出されるような恰好で飛びついてきた。


「うおっとぉ!?」


 どうにか抱きとめる。危ない危ない。


「ユーマ! ただいま帰ったデスヨ!」

なれの周りには年若い娘しかおらんのかや?」


 ウェントリアスが冷ややかにそう言った。


「……結果としてそうなってるだけだ」


 いや、ほんとに。ほんとです。

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