第94話 思ってたのとだいぶ違う 

「おかえり、リュカ。シュラもな」


 俺にへばりついているリュカを剥がして地面に立たせてやる。

 頭を撫でてやると、リュカは目を細めて「うにゅー」と啼いた。シュラの方がおとなしく撫でられているくらいだ。


「ジブン、ユーマに言われたお仕事やってきたデスヨ!」


 ふんふんと鼻息荒く、捕らえた鼠を見せにくる猫みたいにを見せてくれる。シュラの後ろにいる三頭がそうなのだろう。思ってたのとだいぶ違うが。


「ええと――」


 まずは、シカのデカイやつ。角が滅茶苦茶でかい。シカというよりはトナカイに近いかも知れん。

 次、二足歩行のトカゲ。昔懐かしいエリマキトカゲをデカくした感じのヤツ。口からチロチロ火を吐いている。こいつドラゴンの近縁種か? 安全性は大丈夫だろうか。

 最後は、これまたクソでかいダチョウみたいな鳥。翼はほぼ退化しているように見える。代わりに脚がムキムキだ。


「ふむ」


 四つ足というオーダーはほぼ無視してくれてるな。いや三分の一は達成できていると言うべきか。野球で言えば三割打てればトップクラスだ。勝率三割だとBクラス最下位未満だがそこには触れないでおこう。


「えらいぞ、リュカ。よくやった」

「はいデスヨ!」


 もう一度くしゃくしゃと頭を撫でてやる。

 リュカの連れてきたこいつらに馬車――馬ではないが――を引かせる訓練をしないといかんわけだ。シャトルバスもどきを運行しようとするだけで一苦労だな異世界。

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