第81話 たったひとつの冴えないやり方

 メイナード町長との面会を終えると、ノヴァはさっさと王都へと帰っていった。

 しっかり結果を出してもらいたいところだ。


 俺としても呑気に待っているわけにもいかない。


「メシでも食いながらリュカにやってもらう仕事の話をしようか」

「ごはんデス!?」

「そうそうごはん」

「でも、ジブンは獣人デスヨ……」


 まさか人種差別があるとか言うんじゃあるまいなこの世界。

 後でナターシャにでも確認してみるか。

 ともあれリュカの気が進まないなら別の方法を取ることにしよう。


「じゃあ、そこらでなんか買って食べながらうちに帰るか?」

「はいデスヨ!」


 通り沿いの屋台で、肉巻きクレープみたいなモノをふたつ買った。シュラには別途肉だけを買ってやる。シュラは一瞬で肉を平らげたが、リュカの方は悪戦苦闘、といった感じだった。


 獣道の傾斜に辟易しながら山を登っていく帰り道。

 俺はリュカに、彼女の役割を説明した。


「リュカに頼みたいのは動物の調達と調教テイムだ。できるだろ?」

「できるデスヨ」

「四つ足の、荷車を牽引できるようなやつがいい」

「荷車デス?」

「俺はこれから村とホテルの間に道を敷く。そこを往復する定期運行の無料馬車を引くことで、立地の不利を覆す」

「にゅー……?」


 わからないか。

 要は元の世界あっちでいうところのシャトルバス代わりだ。なるべくなら運用ランニングコストのかかるこの手段は取りたくないんだが、ホテルの立地が悪すぎるから仕方ない。


「馬車を引いてくれる動物が要るんだ。その動物の調教と世話がリュカの仕事だよ」

「ジブンの?」

「ああ、リュカにしかできない、リュカの仕事だ。頼めるか?」

「任せるデスヨ!」


 どーんと薄い胸を叩くリュカであった。

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