第80話 問題は新人が解決しますので

「なんだよノヴァ」

「待てと言ったのだ。貴公は性急過ぎる」

「これでも遅いくらいなんだが」

「まだ王国の許可は取りつけていないのだぞ!」


 そんなことか。


「許可は勇者殿が取ってきてくれるんだろ? そういう約束だったはずだ」


 勇者の名がなくとも許可は下りると俺は見ている。

 こんな儲け話に乗ってこないということはあるまい。もし断られたらその時は別の国に話を持ち掛けるだけだ。なるべくそんなことはしたくないが王国の出方次第だ。他国の橋頭保ができることになる可能性を考慮できる人物がひとりくらいはいるだろう。たぶん。


「そ、それはそうだが」

「前倒しだよ前倒し」


 営業許可なんざ開業準備をしながらやるもんだ。お国の許可が出るまで座して待つほど暇は無い。


「もし大臣あたりがゴネるようなら事業が軌道に乗れば土地の使用料の支払い交渉をする、と言ってやれ」


 あんまり払う気はない。交渉をするだけだ。

 我ながらタチが悪いが、駆け引きの範疇だろう。


「わ、わかった。その線でまとめる」

「頼んだ。駄目なら俺が出向くからな」

「……それは」

「困るだろ? 俺が行くなら一人じゃないぞ?」

「わかった。私がなんとかする。貴公に出張でばっていただくまでもない」


 王都に大量の骸骨兵を引き連れた俺が現れる光景でも想像したのだろうか。ノヴァは頬を引きつらせて頷いた。

 

「――道を引くのは結構ですが、我が町とユーマ殿の宿までは距離が離れすぎてはいませんか?」


 メイナード町長の言ももっともだ。

 立地は顧客のホテル選びにおける要件でかなり上位に位置する。

 そして俺のホテルの立地はお世辞にも良いとは言えない。

 だが、


「立地の問題はうちの新人が解決してくれる予定ですから――」

「うにゃ?」

「――ご心配なく」


 リュカは口の周りをベタベタにして首を傾げた。まだ食ってたのか。

 若干心配ではあるが、顔には出さないのが商売人というものだ。

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