第79話 栄達への道を引け
「赤の勇者の名の下にユーマと彼の所有する建物に危険はないと保証します」
「ご足労感謝いたします、ノヴァ様」
俺たちはメイナード町長の自宅の応接間で面会をしていた。
ノヴァが事のあらましを町長に伝えている間、リュカは出された茶菓子をうまそうに食っていた。シュラは表で
一通りの説明が終わり、メイナード町長は俺に向きなおり深く頭を下げた。
「ユーマ殿にもご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。うちとしては商売ができればそれでいいので、お気になさらず」
恩を着せない程度でいい。メイナード町長には、何かの折に気にかけてもらえるくらいの負い目を感じてくれているくらいで、今は丁度いい。
「商売というと、宿屋でしたな」
「失礼ながら申し上げますに、ムラノヴォルタは宿が足りておられないでしょう?」
俺が一気に核心に触れると、メイナード町長は絶句。
ノヴァは面白そうに成り行きを見守っている。リュカはまだ食ってる。
「……何故、それを」
絞り出すように呻くメイナード町長。簡単なことだよワトソン君。
「この町は交通の要衝にもかかわらず商人の出入りがあまりにも多すぎるんですよ。何故か? 長居ができないから。何故長居ができないのか? 宿が足りないから。だから商いも手短になる。単純なモノの売買だけでは町も潤わない。人は町に留まってはじめて商売以外の金を落とすものです。食事代や手土産といったね」
「慧眼ですな」
「前にもお伝えしましたが、うちのホテルは100室あります。どうですか? 少しは足しになると思いますが」
おそらく現在のムラノヴォルタの宿屋の総客室数は100に満たないはず。これを見逃すなら町長失格だ。
「町の裏手からうちの
「――待て!」
メイナード町長の返事より先にノヴァが待ったをかけてきた。
今いいところなんだが?
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