第57話 獣人は無理でも獣は手懐けられる。
ナターシャに走るよう指示をしたアイがするすると俺の方に寄ってくる。
「お疲れ、アイ」
「ありがとうございます、ユーマ様。お茶のおかわりはいかがですか」
「大丈夫」
「左様ですか」
「ん。ナターシャはどう?」
俺の質問に、アイは僅かに首を傾げた。
言葉を選んでいるのか。
「正直申しまして鈍臭いです」
ちっとも選んでなかった。
「アイに一撃入れられるようになりそう?」
「今のアイには十年後くらいに触れるようになるでしょう。十年後にはアイも進歩しているのでアイに触れるのは理論上永久に不可能です。しかしながら早晩人並みにはなると思います」
「なら十分だ」
「はい。ナターシャさんは良いのですが、あの獣人は――」
ちらりとアイは視線を他所に遣った。
その視線の先にはシュラと戯れるリュカの姿があった。
楽しそうに地面を転がっている。
「――あれで宜しいので?」
「アイ、顔こわいぞ」
「いつもと同じ顔です、ユーマ様」
はいはい。同じ同じ。
「リュカはいいんだよ。アイもあんな風に遊んでいいぞ」
「結構です」
「そっか」
「――はい」
アイは半歩だけ立ち位置をずらした。俺の傍に。
さて、リュカを呼ぶか。
「おーいリュカー!」
遊んでいるリュカに声をかける。
が、リュカは一瞥くれただけで俺を無視をした。ひどい。
俺は胸ポケットから秘密兵器を取り出した。
それは、小さいカルパス。
手持ちの在庫が切れたらもう入手不可能になってしまう貴重品だ。
包装を剥いて、
「シュラ! 来い!」
「ばうっ」
秒で来た。
「ふふん」
「あーっ! シュラー!!」
諦めてお前もこい、リュカ。
「……何をやっておられるのですか、ユーマ様」
「それって呆れ顔?」
「いつもと同じ顔です」
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