第50話 獣耳の少女リュカとデュワンゴのシュラ

 獣耳の少女は観念したのか犬――のようなデカい獣――の背から下りて俺の顔を見た。


「ジブンはリュカっていうデスヨ」

「そのデカい犬は?」

「犬じゃないデス! この子はデュワンゴという種類の獣デス! 名前はシュラデス!」


 犬じゃねーか。

 だいぶ攻めた種族名で名前が修羅シュラか。今はそこには触れないでおこう。しかし、「なんだ」と問い掛けておいてアレだが、素直に名乗ってくる尾行者も珍しいな。


「俺はユーマ・サナダという。こっちはナターシャ」

「よろしくね!」

「知ってるデス」

「ほう」


 早速馬脚を露わしたか。いや、はじめからバレバレなんだが。


「リュカは何故初対面の俺たちの名前を知ってるんだ?」

「それはデスね……えーと、えーと」

「まだいじめるんですか? そういう趣味ですかユーマさん」

「違う。断じて違う。これは情報収集だ」

「必死になるところが怪しいですよね。帰ったらアイさんに相談してみますね!」

「おい、ちょっと待て」


 アイに告げ口するのは本当にやめろ。


「じゃあここは私に任せてくださいますか? この子から事情を聞き出せばいいんですよね?」


 そこまで言うならナターシャに任せてみよう。

 お手並み拝見だ。

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