第51話 おっさんであることに自覚的であってもおっさん呼ばわりされると傷つく

 ナターシャは膝を折ってリュカと視線を合わせた。


「ねえリュカちゃん」

「な、なんデスヨ?」

「リュカちゃんはどうして山に登るの?」

「た、頼まれたからデスヨ」

「何を頼まれたのかなあ?」

「それは秘密デスヨ」

「秘密かあ。残念だなあ。リックさんに口止めされてるのかなあ?」

「そうデスヨ。依頼人の名前は明かすなと言われてるデスヨ」


 あっさり語るに落ちたな。

 さて、あのリュカがこんな子を送り込んでくる理由は何だ?

 これが演技とも思えない。

 偵察か、それとも攪乱だろうか? 


「そっかー。じゃあ、私たちと一緒に行かない? リュカちゃんの用事が何かはわからないけど、一緒にいた方が安全じゃないかなあ」

「うにゅにゅ」


 お、考えてる考えてる。

 こちらとしても変に周りをちょろちょろされるよりは目の届くところに置いておいた方が間違いは起こらないだろう。リックの策にまんまと嵌っているような気がしないでもないが、出し抜かれることもないだろう。

 

「いいデスヨ。ジブンはナターシャがどうしてもというなら一緒にいってやるデスヨ」

「うん、どうしても! だからお願い!」

「わかったデスヨ!」

「ということで、ユーマさん。仲間が増えましたよ!」


 ……仲間なのか? 


「それにしてもナターシャ、子供の相手上手いな」

「えへへ」

「ジブンは子供じゃないデスヨ!」

「子供はみんなそう言うんだ」

「ナターシャ、ジブンはユーマきらいデス!」

「あーあー、嫌われちゃいましたよユーマさん。困ったおじさんですねー」

「ほんとデスヨ!」

「知るか。あとおじさんはやめなさい」


 俺にも傷つく心があるのだから。


 今までおとなしくしていたシュラがばうっ、と吠えた。

 犬じゃないと言ってたが、やっぱり犬だな。

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