第48話 尾行の基本は相手に悟られないようにすること、のはず。たぶん
俺とナターシャは町長宅を後にした。
話の腰を途中で全力でへし折られたのが大いに癪に障るがあれ以上居ても進展するどころかこじれる一方だったはずだ。と、思うことにした。さっさと帰ろう。アイも待ってるはずだし。
「ナターシャ、謝礼金もらえたからよかったな」
「ほんとによかったんですか? 私が受け取ってしまっても」
「いいよ。俺には結果は予想ついてたけど、ナターシャには怖い思いさせたし、勇気出してくれたし」
「……ありがとうございます!」
礼を言われることじゃないんだよなあ。まあいいけど。
「ところで、いいんですか? あの冒険者の人たち、ユーマさんのこと親の仇かってくらい睨んでましたよ!」
「親の仇どころか親の恩人のはずなのに、何故だ」
「ユーマさん、喋り方が怖いんですよ。だから誤解されるっていうか」
「え」
そうなのか!?
「そんなに怖いか? ナターシャも俺のこと怖いって思ってるのか?」
「今は全然平気ですけど! その、最初の頃はちょっと怖かったですよ……ってユーマさん? 大丈夫です?」
「おう、大丈夫だ。問題ない」
「声色全然大丈夫じゃありませんけど!?」
そうかー。怖いかー。知らんかったわ。
以後気を付けよう。なお、気を付けられるかどうかは自信はない。
「で、だ。俺が怖いことは置いといてだな」
「置いちゃうんですか!?」
「置いちゃうんだよ。棚上げしちゃうんだよ。それより――」
俺は小声で言った。
「――気付いてるか?」
「ええ、まあ。あんなに堂々とされたら気付かずにはいられませんって」
「だよな」
「はい」
俺たちの後ろをデカい犬――だかなんだか――に乗った獣耳の少女ががっつりついて来ている。これは果たして尾行、なのだろうか。
「まだ町中だからな。進行方向が同じだけということもある」
「そうですね!」
だが。
しかし。
なんと。
町の裏手の山道、というか獣道に差し掛かってもなお、獣耳の少女は俺たちの後をついて来ていたのだった。
「えらいポンコツを尾行に寄越したもんだな、リックよ……」
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