第47話 まともな人物の息子がまともである保証は何処にもない

「そこをどいていただけますか? えーと、リックさんでしたか」

「逃げるのか?」

「帰るんですよ。話は終わりましたからね」


 だから退けと言っている。


「冒険者の皆さんが我が家を強襲しおそって留守していた間に町にクマが下りてきましてね。それの退治で我々は疲れているんですよ。通していただけませんかね」

「なんだとぉ!?」


 嫌味たっぷりに言ってやるとリックではなく鎧の男――今は鎧は身に着けていないが――がキレた。ゼクウとかいう脳筋。


「いや、本当に」

「アンタみたいなひょろいのがやったってのかよ」


 あまりにムカつく態度だったのでナターシャに加熱させてやろうかと思った。

 が、俺も大人なので、権力に頼ることにする。

 ちらりとメイナード町長に視線をやると、彼は済まなそうな顔をしていた。


「――なんとかしていただけませんか?」

「申し訳ありませんユーマ殿。リック、君たちの話は後で聞くだからそこをどきなさい」


 渋々と言った形で脇にどける三人。

 やれやれだ。


「帰るぞ、ナターシャ」

「はいっ」

「これで済んだと思うなよ!」


 出ていく背中にかけられたのが吃驚びっくりするほど雑魚ザコっぽい捨て台詞だったので完全に舐めていたのだが、それが裏目に出てしまっていたことに俺が気付くのは数日後の話である。

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