第27話 そうだ、Villageへ行こう

 その日は、ナターシャを屋上に連れて行き、貯湯槽の湯を沸かせるかどうかの確認をした。貯湯槽は特殊なステンレス製なのだが、ステンレス越しでもナターシャは湯を沸かすことができた。やっぱり使えるわ、この魔法。魔法万歳。

 その後で館内を上層フロアから案内して、当ホテルの従業員を紹介してやった。

 ほぼ十割骸骨なのだが。


「えええ、ええと、よ、よろしくお願いしますっ!?」


 ビビりまくるナターシャに骸骨兵スケルトンウォリアーたちはカタカタと骨を鳴らして歓迎の意を示した。それがナターシャを尚更ビビらせていたりなどした。


「明日の予定なんだけどな」


 俺の話をアイは無表情に、ナターシャは神妙な顔で聞いている。


「麓の集落に行こうかと思う」

「――情報収集ですか、支配人」

「そうだ」

「承知しました。同行いたします」

「あー、いや、アイは留守番だ」

「はい?」


 こわいコワイ怖い。無表情なのに不満げなのがありありと伝わってくる。やめなさい。その顔やめなさい。やめてください。


「理由を説明させてくれ」

「――どうぞ、支配人」


 だから怖いんだって。


「たぶん明日にはまた冒険者連中が来る。俺もアイもいないんじゃあ、指揮ができる奴がいなくなる。大丈夫だとは思うが万が一ってこともある。だから頼む。アイはホテルの防衛に当たってくれ」

「概ね理解しました、支配人」


 概ねかー。まあいい。


「敵は排除だ。いつも通り川に落とせ。もしも宿泊客が来たら前金で泊めてやれ」

「かしこまりました、支配人」

「そんな顔するなよ。麓へはまた今度連れて行ってやるから」

「どんな顔でしょうか。アイは留守番の任務を拝命しました」


 うーん、拗ねとる。


「麓の集落にはナターシャを連れて行く」

「えっ?」

「……」


 俺が宣言すると、今度はナターシャが変な顔をした。

 アイもナターシャを無表情に睨むのやめなさい。本当に。

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