第26話 違うのはわかるけどどの程度違うかはわからない
二階の客室――シングルルームにナターシャを案内した。
ユニットバスを含めて12㎡くらいのこぢんまりとした部屋である。ベッドの他にはデスク、チェア、クローゼットがあるくらいだ。テレビはあるだけで当然映らない。
だが、
「えーっ!? こんなすごい部屋使わせてもらっていいんですか?」
「ココ、本来は客室なんだよ。ナターシャも知っての通り、今のところうちのホテルにやってくるのは冒険者とかいうならず者集団だけでな。だから部屋はしこたま空いてる。汚したり壊したりしなければ自由に使ってくれていいぞ」
「ありがとうございます!」
俺の脇に控えていたアイに指示をする。
「この子に合うサイズの制服を用意してやってくれるか」
「はい。かしこまりました、支配人」
「その後、ふたりで事務所に来てくれ。急がなくていいから」
「はい。かしこまりました、支配人」
俺はひとり事務所に戻り、椅子に腰かけた。
目を伏せ、
「麓の集落までどれくらい離れている?」
実際には独り言ではなく、俺の中にいる「ヤツ」に尋ねているわけだが。
(儂に訊かれてものう?)
「お前、勝手に俺の体使って骸骨探しに山降りたんだろうが」
(ちっ、覚えておったか)
「無許可で俺の体を使うのは金輪際やめろ。いいな?」
(その点については儂が悪かった。次からは許可を取って使うとしよう)
それはそれでやめてほしいものだが。
本題に戻そう。
「――で、どれくらい離れてるんだ?」
(麓の集落へは、朝出立すれば昼前には到着するくらいかのう)
山道であることを加味しても結構遠いな。
しかし、さっきも感じたが、集落の様子を実際にこの目で見て置く必要はある。文化や技術のレベルが相当隔絶してるのはなんとなくわかったものの、この目で見てみないとわからないこともある。今後どうするかを決めるにあたって、現地視察は必須事項だ。
「お待たせしました、支配人」
「へ、変じゃないですか、この恰好?」
アイとナターシャが事務所に入って来た。
制服姿で二人並べばそれなりに華やいで見える。よしよし。悪くない。
「いや、似合ってるよ」
……あとは
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