作戦開始(2)
目的地に到着し、車から降りた。
すでに遠くからは爆音や銃声などが聞こえ、ここが戦場であることをより一層認識させた。
「ここで今から……」
アレンは固唾をのんで周りを見回した。整備された大砲がずらりと並び、その隣には真剣な面持ちの兵士たちが待機している。
「ほら、突っ立っている暇はないぞ」
後ろを振り向くと、準備をすでに整えた少佐がそこに立っていた。
「たしか君は彼女から頼まれごとがあるんだろう?」
「は、はい!」
アレンはアリウムからの頼まれごとを思い出す。それは戦闘中、安全を確保しながらも彼女の近くにいてほしいというものだった。
「どうして?」と彼が尋ねると、彼女は「私は戦闘が終わったら力を使い果たして倒れてしまうから助けにきてほしい」とのことだった。
アレンは危険だとはわかってはいるが、彼女の頼みということもあって一人近くに待機することになっていた。
「この作戦において彼女が一番のカギとなる。そのバックアップを頼んだぞ」
「はい」
アレンがそう威勢よく返事をすると、少佐は乗ってきた軍用車に乗って去っていった。
「アリウム、準備はできたか?」
少佐と別れた後、彼はアリウムのいるテントに入った。
中にはすでに着替えを終えたアリウムが身だしなみを整えていた。
「うん、大丈夫」
「そうか」
アレンはそれを聞いて近くの椅子に腰かけた。
このあわただしい状況下でゆっくりできるのはせめて今くらいだろう。彼はぼーっとアリウムを見つめていたが、ふと気になることがあった。
「なあアリウム。君はどうやって戦うんだ?」
視線に気づいた彼女がこちらを見る。
「何って、そうだなあ……」
彼女は少し考えこむと、何か思いついたように手を前に突き出した。
「見てて」
不思議そうに見るアレンの前で彼女は目をつむり神経を研ぎ澄ませ始めた。
最初こそ何も変わらなかったが、だんだんと手の周りが赤いオーラに包まれ始めた。
「んん?」
そのオーラは少しづつ手のひらの上に形を成し始め、バレーボール大ほどの赤い球体となった。
「おお」
彼女が微笑を浮かべるとその球体はだんだんと小さくなっていき、そして姿を消した。
「今のは……」
「魔法ってやつだよ、魔法」
得意げに話す彼女だったが、体力を使うのか額には少し汗を浮かべていた。
アレンはその様子をまばたきをすることさえ忘れて見入っていた。今まで絵本の中や空想のものとしてとしか知らなかった魔法、それが現実に存在したのだ。
「これが魔法……」
彼はしばらく言葉を失った。
不死の魔女は休まらない クソクラエス @kusokuraesu
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