第8話 トップ合格

「ん…」

今、何時だろ…六時には目覚ましセットしたはずだから、六時よりかは前なはず。

そう思いながら目覚まし時計に手を伸ばすと—

ピピッピピッ…

うるせえ。

また、アラームが鳴る前に起きてしまった…


一階に降りるとすでに親父が起きて新聞を読んでいる。

「おはよう」

「おう」

「なんか目ぼしいニュースある?」

「特にはないな」

「そっか」

もともと世界情勢や経済ニュースなどは見ていたが、ここ一年は面接での時事ネタ対策としてかなり新聞やニュースを読みこんだ。

特に地方新聞である上毛新聞は地元ならではのネタも転がっているため、毎日見るようにしている。

最近はどこも電子化が進み、その流れは新聞だけでなく書籍にも及んでいるが、俺はどちらも紙媒体を好んでいる。

理由は読み戻しがしやすかったり、全体が見やすかったりと色々あるが、一番は「努力の跡が見えるから」である。

本棚に一冊一冊と増えていく本が、確実に自分の知識となって力になっていることを実感できる。この目に見える実感が少しずつ積み重なって、自信となる。懐かしい言葉だ。

「今年で五年目だからそのニュースならあるな」

「そっか」

今年で五年。もう、五年。

長いようであっという間だったな。

親父が読んでいる新聞を横目にのぞくと『天災から五年 革新的な政策の歴史』という見出しがおどっていた。

…天災じゃなくて人災だろうが。

「悪い。親父、ちょっと先に読ませてもらってもいい?」

「おう」

そういって親父から新聞を受け取る。

見出し通り、だいたいはウイルス後の年金制度の解体や、ウイルス以前から推進されていた特定就職支援制度がウイルス後に大いに役立った、という話題ばかりであった。

すると、その中の一つに『全日本群馬高校、本日二次試験』の小見出しがあった。読み進めると、『今年の受験生は1919名で前年より69名減少』『合格者は1200名前後とみられる』といった内容になっていた。大方予想通り。

ちなみに合格者数がきりのいい数でないのは、『合格は枠で決めているのではなく、能力で決めている』ということをアピールするため。

「おい、時間大丈夫か?」

親父が声をかけてくれる。集中すると時間を忘れる悪い癖。

「うん。ありがと。すぐ準備するね」


筆記用具よし、受験票よし、連絡用の携帯よし。

あとは合格を勝ち取るだけ。

そこが自分の目標の第一歩。

ただ、もっと早く進むためにはただ合格するだけでは終われない。

1200人の中の1人。

つまり、トップ合格。

俺はこの受験をトップの成績で合格してみせる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る